オーディオルームの防音対策


他の防音対策とは異なり、《「音」を思う存分に楽しみたい》という大きな目的を持つのがオーディオ・ルームです。


そのため、近隣の迷惑を考慮した騒音対策だけではなく、室内の環境や音響機器に合わせた最適な「音場」を作ることも求められます。
音響機器のパフォーマンスを最大限まで堪能できるように「音響特性」まで設計すること。
そのための空間を創り出すこと。
それが、オーディオ・ルームで防音を施す特色といえるでしょう。
ポイントは3つあります。

オーディオルームを作る3つの防音ポイント

騒音の測定単位にはデシベル(dB)が用いられ、数値が大きいほど騒音の度合いが高くなります。
50dBを超えると、「うるさい」と感じるようになるため、理想的な生活環境としては45dB以下に抑えることが望ましいでしょう。


また、オーディオ・ルームの防音には、より専門的な知識・技術や豊富な経験が必要となります。
単なるリフォーム会社や防音対策のみを担う業者ではなく、「音響」に強い業者を見つけることが失敗しない鍵となります。

業者を選ぶ4つのチェックポイント


当然ながら、求める防音レベルや建物の構造の違いなどによって費用も異なってきます。

予算を気にしすぎると、求めていた音質に届かない・防音の効果が低いという満足できない結果に終わってしまう恐れもあります。
望んでいる音質と防音効果を実現するために、どんな方法があるのか、どれぐらいの予算が必要なのか、業者選びの段階からしっかりと調べておきましょう。
(防音には詳しくても、「音響」の知識には乏しい防音業者も多いので注意が必要です)

「音場」と「音響」について

音波が存在している空間を「音場」と呼び、音の響きのことを「音響」と呼びます。
ずっと聴いていたいと思えるような心地よい音の響き(音響)と、それを楽しめる空間を創ること(音場)。
それがオーディオ・ルームの防音設計として最も大切な役目です。
音は、室内では壁や天井、床などに跳ね返って聞こえます。

スピーカーの音は、<音響機器から出された音>+<室内の壁などで跳ね返った音>が耳に入ってくるもので、実は部屋の形状や壁・天井・床などの材質によっても変化します。
音の響きが多いと、豊かでつやのある音に感じられます。
しかし、それが過剰になると明瞭度が失われて、かえってうるさく聞き取りにくくなります。
反対に、響きが少ないと無機質で味のない、つまらない音に感じられます。

これを適度なバランスに設定することが満足度の高いオーディオ・ルームを作る基本となります。

残響/残響時間

心地よい音の響きが生まれるかどうかは、この「残響の長さ(残響時間)」によって決まります。
残響時間は室内の音場を評価する基準であり、《部屋の隅々まで音が行き渡った後に音を止めて、-60dBに減衰するまでに要した時間》で示されます。
なお、通常は「RT」または「RT60」と表記されます。
残響時間が長いほど響きが多く、その状態を「ライブ」といい、短いほど響きが少ない状態を「デッド」といいます。

高音質で快適な空間を作るには音質や音色を調整することも大切ですが、残響時間の調整ミスも、音を悪くする大きな要因のひとつに挙げられます。
最適な残響時間は、部屋の大きさ、音のジャンル、リスナーの好みによっても異なりますが、平均的には吸音力25~35%程度が目標値となります。
残響時間の測定は高質なオーディオ・ルームを作る大きな指針となりますから、なるべく実施するようにしましょう。

フラッターエコー(定在波)

部屋の天井と床、対面同士の壁と壁のように、2つの平面間で発生した音は反射を繰り返して減衰に時間がかかり、余分な残響音を生じます。
この残響音は「フラッターエコー」や「定在波」と呼ばれ、スピーカーの音が広がりを見せない、音量を上げるとうるさくなってしまう、というマイナス作用があります。
このとき、吸音材としてスピーカー前の床にカーペットを敷いたり、壁にカーテンを設置するなど、簡易的な対策で改善できる場合があります。

防音性能「D値」について

オーディオ・ルームを作るメリットのひとつは、《好きな時間に、好きなだけ音量を出して、好きな音を楽しめる》ことです。
そのためには、近隣に迷惑をかけないことが大切です。そして、音の伝達を遮断する「遮音」が重要になります。
遮音とは、音源から音を聞く場所までの間に遮蔽物を設置すると、空気中を伝わっていた音が遮られ、小さく聞こえるようになることをいいます。

遮音は、外壁、開口部・窓、内壁、床の部分に必要とされますが、音は1つの穴があればどこからでも侵入するため、どこか1か所だけ施工すれば問題ない、というわけではありません。
音の遮断する能力は「遮音性能」と呼ばれ、その数値はJIS(日本工業規格)によって「D値」で表すように定められています。
ホームシアターの場合、隣接する室や戸によって異なりますが、だいたいD-60~D-70程度が目標値となります。